水質分析ツールの誕生とその背景

創業から70年、水質の簡易分析ツール「パックテスト」をリリースしてから50年。半世紀以上もの間、様々な現場でご活用いただいております。
多くのお客様に選ばれて、「水質の簡易分析ツール」として国内トップシェアを誇るパックテストをはじめ、弊社では様々な研究開発を行っております。

1952年の創業当初、まさに高度経済成長の真っ只中であった日本は激動の時代を迎え、すさまじいスピードで急成長する産業の背景には、常に「公害問題」がつきまといました。
1967年には「公害対策基本法」、1971年には「水質汚濁防止法」が施行され、環境規制がますます厳しくなる中、時間もコストもかかる公定法だけではない「だれでも、どこでも」現場で迅速に検査できる簡易分析器の開発が求められたのです。
そんな中、共立理化学研究所はどこよりも早く時代のニーズに答えられるよう、会社一丸となって研究開発をすすめました。「水質の簡易分析メーカー」である私たちのもとには、多くの関係各所から規制値の判別ができる簡易分析器の開発が求められ、それが私たちの開発の後押しをする一因となりました。

エコフレンドリーへの取り組み

今日では、パックテストは産官学をはじめ一般家庭においても幅広く使用される製品となりました。私たち共立理化学研究所の歴史は、「研究開発の積み重ね」の歴史でもあります。
2022年、私たちは新たに「ブンセキをもっと身近にする」というパーパスを掲げました。これからも私たちは、現場の生の声から課題を拾い集め、当社の積み重ねた伝統と技術をもって簡易分析という世界にイノベーションを起こし続けてまいります。

近年では、環境を守る会社としてペーパーレス化を実施し、一歩ずつ環境保護に貢献していく取り組みをすすめています。
また、既にある製品をより簡易操作ができるようにリニューアルすることで、部材点数が減り、よりシンプルな操作で簡単に測定ができるようになりました。現在も様々な製品の操作方法を見直し、環境と使いやすさに考慮した開発を続けています。

製品開発例

パックテスト動植物油脂

食品工場排水などに含まれる動植物油脂類は、マンホールや配管が詰まるなど、大きな社会問題になっています。
油脂の測定は非常に労力と時間を有します。油が多く排出されるような配管や、流出等の事故現場においてもすぐに調べられるような「現場分析」が課題でした。
排水中の油脂濃度を簡単にチェックできる検査キットの要望が大きかったため、今回新たに自社開発して製品発売に至りました。

測定原理として、健康診断の血液検査で中性脂肪を測定する手法を水質検査に応用しています。開発担当者が社内の健康診断結果を眺めていて、「あっ、これだ!」 とひらめいたことが、製品開発のきっかけとなりました。

アスベスト検出キット

石綿、アスベストと聞くと「危険な物質」だと皆さんピンとくるかと思います。
耐久性などに優れ、安価な石綿はほんの数十年前まで「奇跡の鉱物」と呼ばれ、様々な建材などで使用されてきました。
便利さとは裏腹に、非常に有毒性の高い石綿。2004年には使用禁止となりましたが、それ以前に使用されていた建物で老朽化が進み、石綿含有建材を使用していた可能性のある建築物の年間解体件数は6~7万棟、これが2028年頃にはピークの10万棟を迎えると推定されています。今後解体や改修工事が増えることは間違いないと言えるでしょう。

一方、解体等の工事件数の増加が見込まれることによって、工事等での石綿飛散対策の規制も強化。2021年4月、改正大気汚染防止法の施行によって、解体工事前の事前調査の実施や調査結果の記録と保存が義務化されました。

ニーズが強まることが想定される中、当社の強みである「簡易分析」で、事前調査における負担の低減ができないか。
そんな思いから、「アスベスト検出キット」の製品開発がスタートしました。
広島県立総合技術研究所保健環境センターにより開発された特許技術(特許 第6781441号,第6864892号)を用い、広島県とのライセンス契約に基づく本製品の研究開発に着手、製品化にいたりました。
正確な含有を証明する製品ではありませんが、工期短縮や費用削減など「簡易分析だからこそできる」製品は、共立らしくもあり、また新しい挑戦でもあります。

スマートパックテスト

「パックテストは便利だけど、目視ではちょっと判定がしづらい…」
「作業者によって、読み取り値が異なる…」
パックテストは機械を使用しなくても、簡単に知りたい物質の濃度を調べることができます。その半面、「人の目」ならではのお悩みも多く頂いておりました。 今ではすっかり身近になったスマホを使って、アプリで測定できれば…。そんな思いから開発がスタート。パックテストの試薬を通常通り発色させたら、あとはスマホのアプリを起動して撮影をするだけ。色を読むのに自信が無くても、簡単に濃度を知るができるようになりました。

2020年4月にiPhone®のアプリとしてリリースを開始後、たくさんの反響をいただいています。
まだまだ開発途上の本サービス。今後はさらに便利になるよう、そしてパックテストを世界中の人に知ってもらえるようなアプリにするため、新たなサービスへと挑戦していきます。